何が問題になるか
場面
退職届を出した社員から、数日後に「退職届を撤回したい」と言われることがあります。上司が退職届を受け取っただけで、人事部長や社長はまだ見ていない場合もあります。会社としては、撤回に応じるべきかどうか判断に迷う場面です。
退職の連絡が本人ではなく退職代行から届いた場合は、退職代行から連絡が来たとき、本人と直接話してよいかで整理しています。
法律の整理
裁判例は、退職の意思表示を2つに区別しています。「辞職」(一方的な解約の申入れ)は、会社に到達した時点で効力が生じます。そのため、撤回はできません。これに対し、合意退職を求める意思表示(合意退職の申出)は、会社が承諾するまで撤回できます。
合意による退職という考え方は、労働契約法の基本と重なります。労働契約法は、第1条で「労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則」を掲げています。第3条は、第1項で、労働契約は「対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする」と定めています。第4条は、第2項で、労働契約の内容を「できる限り書面により確認するものとする」と定めています。
また、退職の意思表示が強迫や錯誤によるときは、本人から取消しの主張があり得ます。民法は、「意思表示」の節と「無効及び取消し」の節で、意思表示の取消しについて定めています。
会社が備えること
確認すること
- 書面の文面が「退職します」なのか、「退職させていただきたく、お願いします」なのか
- 誰が、いつ、その書面を受け取ったか
- 承諾の権限者(人事部長・社長)が受理したか。受理したことを本人に伝えたか
- 就業規則に、退職の手続と承諾の権限者の定めがあるか
- 退職届を書いた面談で、強い言葉での説得や事実と違う説明がなかったか
書面の文言と提出の経過を確かめる

対応
- 撤回の申出を受けた日時と内容を記録します。
- 書面の文言と提出の経過を確かめ、辞職と合意退職の申出のどちらに当たるかを整理します。
- 承諾の権限者(人事部長・社長)が受理した時点で合意退職が成立する運用を、就業規則に定めます。
- 受理したときは、権限者の名前と受理日を書いた受理の書面を本人に渡します。
- 退職の意思を確かめる面談は複数名で行い、やり取りを記録に残します。
受理したときは本人に書面を渡す

ご相談で伺うこと
- 退職届・退職願の写しと、提出から受理までの経過
- 就業規則の退職に関する規定
- 撤回の申出があった時期と方法
- 面談の記録の有無と、同席した人
- 残った有給休暇の扱い(退職する従業員が、残った有給休暇の買取りを求めてきたも参照してください)