何が問題になるか
場面
在宅勤務中の社員から、けがをしたので労災の申請をしたいと申出がありました。自宅で作業中に転んだ、長い時間のパソコン作業で腰を痛めた、といった内容です。会社の目が届かない場所で起きたため、業務とのつながりをどう考えるかで迷う場面です。
法律の整理
在宅勤務中でも、業務遂行性と業務起因性があれば業務災害になります。厚生労働省のテレワークガイドラインのQ&Aが示す考え方です。業務中の転倒や、長時間の作業による腰痛などは対象になります。一方、私的な行為をしている間のけがは対象外です。
けがと業務とのつながり

根拠は労働者災害補償保険法です。第7条は、第1項で、保険給付の一つとして「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付」を挙げています。第3条は、第1項で、「労働者を使用する事業を適用事業とする」と定めています。第2条は「労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。」と定めています。
会社は、社員の労災の請求に協力する義務があります。「在宅だから労災ではない」という理由で、請求を拒むことはできません。
会社が備えること
確認すること
業務時間・作業場所・中抜けの記録は、業務災害かどうかを判断する材料になります。けがの申出があったら、次の点を確かめます。
- その日の始業・終業の時刻と、業務をしていた時間
- 作業をしていた場所(自宅のどの部屋か、自宅以外か)
- 中抜けの有無と、その時間帯
- けがをしたときに何をしていたか
社員から聞き取った内容は、日時とあわせて記録に残します。
日時と内容を記録に残す

対応
- 社員から請求の申出があれば、手続に協力します。
- 在宅勤務の記録のルールを整えます。始業・終業の報告の方法、中抜けの申告、作業場所の届出を、就業規則やテレワークの規程に定めます。
- 自宅の作業環境を確認します。厚生労働省は、ガイドラインの別紙として「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】」を公表しています。
- 会社が点検する項目は、「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】」にまとめられています。
- 安全衛生教育を行います。机や椅子、照明の整え方や、長い時間同じ姿勢を続けない工夫を伝えます。
在宅勤務の労務管理の全体は、テレワークの労務管理で扱っています。
ご相談で伺うこと
- けがをした日時、場所、そのときの作業の内容
- 在宅勤務の規程と、労働時間の記録の方法
- 中抜けや私用の申告のルールがあるか
- 社員からの申出の内容と、これまでの会社の対応
- 自宅の作業環境の確認や安全衛生教育を行ってきたか