何が問題になるか
場面
残業を上司の事前承認制にしている会社で、承認を得ないまま社員が残業することがあります。上司はそれを知っていても、止めていません。会社としては、承認のない残業には残業代を払わない扱いにしたいと考えています。退職した社員から請求を受けたときの対応は、退職した社員から未払い残業代の請求書が届きましたで扱っています。
法律の整理
事前承認制をとっていても、会社が残業の事実を知りながら黙認していれば、その時間は労働時間と認められます。この場合、会社には割増賃金の支払義務があります。承認を得ていないことだけを理由に、支払を拒むことはできません。
承認制を機能させるには、承認のない残業を実際に止める運用が必要です。具体的には、帰宅を指示し、その指示を記録しておくことです。規程に承認制を定めただけの形だけの承認制は、防御になりません。
労働時間の把握は、労働安全衛生法でも会社の義務とされています。同法第66条の8の3は、事業者に労働者の労働時間の状況の把握を義務づけています。同法は第1条で、労働基準法と「相まつて」、「職場における労働者の安全と健康を確保する」ことを目的に掲げています。また、第13条は、第4項で、産業医を選任した事業者は、産業医に「労働者の労働時間に関する情報」などを「提供しなければならない」と定めています。事前承認制をとる場合も、この労働時間の把握義務との関係を整理しておく必要があります。
厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を2017年1月20日に策定しています。承認制の運用を見直すときは、このガイドラインもあわせて確認します。
会社が備えること
確認すること
- 就業規則や社内規程で、事前承認制をどう定めているか
- 承認のない残業を、上司や会社が知っていたか
- 知ったときに、帰宅の指示などで残業を止めていたか
- タイムカードやパソコンの記録と、申請した時間に差があるか
- 承認のない残業を止めた記録が残っているか
申請と記録の差を確認

対応
- 承認のない残業を見つけたら、上司がその場で帰宅を指示する
- 帰宅を指示した日時と内容を記録に残す
- 打刻やパソコンの記録と申請の差を、定期的に確かめる
- 差があれば、実際に働いた時間かどうかを本人に確認する
- 承認制の手順を就業規則や社内規程で明確にし、社員に周知する
- 管理職に、黙認した残業は労働時間と認められることを伝える
実際の勤務を本人に確認

ご相談で伺うこと
- 事前承認制の定め方と、社員への周知の方法
- 承認のない残業が起きた頻度と、上司の対応
- 労働時間の記録の方法(タイムカード、パソコンの記録など)
- 社員から請求を受けている場合は、その内容と時期
- 就業規則と社内規程の写し