何が問題になるか
場面
退職した元社員から、未払い残業代の請求書が内容証明郵便で届くことがあります。代理人の弁護士の名前で届き、回答の期限が書かれていることもあります。在職中は何も言われていなかったのに、退職後に過去の残業代をまとめて請求される形です。この記事では、どう扱うか、どこから手をつけるかを整理します。
法律の整理
賃金請求権の時効は、当面3年です。請求を無視すると、労働審判や訴訟に進みます。裁判になると、未払いの額に加えて、同額の付加金と遅延損害金が加わることがあります。
根拠になる条文を確認します。労働基準法は、賃金の支払について「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。労働時間については、「一週間について四十時間」を超えて、また「一日について八時間」を超えて、労働させてはならないと定めています。
厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を平成29年1月20日に策定しています。そのうえで、「使用者は労働時間を適切に管理する責務を有しています」と説明しています。管理監督者の扱いについても、厚生労働省は、多店舗展開する小売業・飲食業の店長などを念頭に、判断の要素をまとめた通達を出しています。
会社が備えること
確認すること
- 請求の対象になっている期間と、請求額の計算の前提
- 元社員のタイムカード、PCのログ、業務日報が残っているか
- 固定残業代を支払っていたか。その定めが雇用契約書や就業規則にあるか
- 元社員を管理監督者として扱い、残業代を払っていなかったか
- 回答の期限と、請求の相手方(本人か代理人か)
請求と記録を確認

対応
- 労働時間の記録(タイムカード・PCログ)を保全します。退職者のPCやアカウントのデータを消去・初期化しないよう、社内に指示します。
- 請求内容と記録を突き合わせます。日ごとの労働時間、休憩、休日、支払済みの手当を並べて、どこに差があるかを確認します。
- 固定残業代の定めと支払いの実態、管理監督者の扱いを確認します。
- 期限までに、請求書を受け取ったことと、内容を検討中であることを回答します。
交渉では、記録で確認できる部分と争いのある部分を分けて考えます。そのうえで、支払額、支払方法、清算条項を決め、合意した内容を和解の書面にまとめます。同じ働き方をしている従業員がいる場合は、その従業員への波及も含めて、今後の方針を決めます。
記録を保全して突き合わせる

ご相談で伺うこと
- 請求書(内容証明郵便など)の写しと、回答の期限
- 元社員の雇用契約書、就業規則、賃金規程
- 在職期間のタイムカード、PCログ、給与明細
- 固定残業代・管理監督者の扱いを決めた経緯
- 同じ働き方をしている従業員の人数と勤務の実態