何が問題になるか

場面

入社する従業員や退職する従業員に、秘密保持の誓約書へ署名してもらいたいというご相談があります。ひな形にある「会社の情報全部を漏らさない」という文言を、そのまま使っている会社もあります。違反したときの違約金を書き込んでよいかという質問も受けます。誓約書がどこまで有効かは、書く前に整理しておく必要があります。

法律の整理

入社時・退職時の誓約書は有効です。ただし、対象の情報が「会社の情報全部」のように無限定だと、営業秘密の秘密管理性の裏付けとしては弱くなります。対象は顧客リスト・仕様書・原価などに特定し、秘密表示とアクセス制限を伴わせることが大切です。退職時には、情報の返還・消去を確認します。

経済産業省は、営業秘密を「有用性」「秘密管理性」「非公知性」の要件を満たす情報と説明しています。そのうえで、「企業が持つ秘密情報が不正に持ち出されるなどの被害にあった場合に、不正競争防止法で民事上・刑事上の措置をとることができます」としています。ただし、そのためには秘密情報が営業秘密として管理されていることが必要だとしています。管理の水準については、経済産業省が2025年3月に改訂した営業秘密管理指針があります。この指針は、「不正競争防止法による保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示すもの」とされています。秘密保持誓約書の参考例も、秘密情報の保護ハンドブックの参考資料として公開されています。

違約金の条項は、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)により、労働契約の不履行について定めるものは無効です。退職後の秘密保持違反について違約金を定める場合も、同条の趣旨や金額の相当性から争われやすいため、金額を予定せず、実際に生じた損害の賠償を求める形にします。同条は「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と定めています。

営業秘密の保護の範囲については、営業秘密とデータの保護が広がりましたでも取り上げています。

会社が備えること

確認すること

  • 誓約書で守りたい情報は何か(顧客リスト、仕様書、原価など)
  • その情報に、秘密であることが表示されているか
  • その情報を見られる人が限られているか(アクセス制限)
  • 入社時と退職時の両方で誓約書を取っているか
  • 違約金や損害賠償の額を定める条項があるか

情報へのアクセスを確認

情報管理担当者が画面のアクセス設定と資料を確認する場面。
その情報を見られる人が限られているか(アクセス制限)

対応

  • 誓約書の対象を、顧客リスト・仕様書・原価など具体的な情報で書き直す
  • 対象の書類やファイルに、秘密であることを表示する
  • 対象の情報を見られる人を決め、アクセス制限をかける
  • 退職時の誓約書に、資料の返還とデータの消去を確認する欄を設ける
  • 労働契約の不履行について違約金を定める条項があれば、削るか見直す

退職時に資料を返還

退職する従業員がパソコンと資料を返し、担当者が返還記録を確認する場面。
退職時の誓約書に、資料の返還とデータの消去を確認する欄を設ける

ご相談で伺うこと

  • 今使っている誓約書と、就業規則の秘密保持の定め
  • 守りたい情報の種類と、保管の場所・方法
  • 秘密表示とアクセス制限の現状
  • 退職予定の従業員の有無と、その従業員が担当していた業務

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出典