何が問題になるか
場面
退職する社員に、競合する会社へ転職しない旨の誓約書を書かせている会社があります。元社員が同業の会社に移ったとき、誓約違反を理由に転職先での就業をやめさせたいと考えることがあります。そのとき、誓約が裁判で有効と認められるかが問題になります。書式を使い回していて、期間や地域の定めが無い誓約書も見受けられます。
法律の整理
競業避止義務は、退職した人の職業選択の自由を制約します。そのため、有効性は次の事情を総合して判断されます。
- 守るべき会社の利益
- 従業員の地位
- 地域・期間・業務の限定
- 代償措置
範囲を限定しない誓約は、無効になりやすいです。経済産業省の参考資料では、期間は1年程度とし、対象を競合する業務に限定し、退職金の上乗せなどの代償があると、有効性が高まるとされています。
誓約が無効でも、営業秘密の持ち出しには不正競争防止法で対応できます。経済産業省は、秘密情報が不正に持ち出された場合に「不正競争防止法で民事上・刑事上の措置をとることができます」と説明しています。そのためには、情報が「営業秘密」として管理されていることが必要です。
不正競争防止法第2条は、第6項で、営業秘密を「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定めています。同条第1項第7号は、営業秘密を示された人が「不正の利益を得る目的で」使用・開示する行為を不正競争としています。第3条は侵害の停止又は予防の請求を、第4条は損害賠償を定めています。
会社が備えること
確認すること
- 誓約書で禁じている業務の範囲、地域、期間
- その社員の在職中の地位と、接していた情報の中身
- 誓約の見返りとして支払った手当や退職金の上乗せの有無
- 持ち出された資料やデータがあるか、それが社内で秘密として管理されていたか
制限の範囲を確認

対応
- 使っている誓約書の書式を見直し、禁止する業務・地域・期間を具体的に書きます。
- 期間は1年程度とし、対象を競合する業務に絞ります。
- 代償として手当や退職金の上乗せを検討し、誓約との結び付きを書面に残します。
- 秘密情報にアクセス制限をかけ、秘密である旨を表示して、営業秘密として管理します。
- 退職時に資料を返還させ、秘密保持の誓約を取り付けます。誓約書の考え方は従業員に秘密保持の誓約書を書かせたい。どこまで有効ですかで整理しています。
退職時に資料を返還

ご相談で伺うこと
- 誓約書の書式と、署名した時期
- 退職する社員の職務・地位と、扱っていた情報
- 代償として支払ったものの内容
- 転職先の事業と、元社員が担当している業務
- 持ち出しが疑われる資料と、その管理の状況