何が問題になるか

場面

営業職の社員に、毎月定額の「営業手当」を払っています。会社は、この手当に残業代が含まれると説明してきました。ただ、雇用契約書にも賃金規程にも、何時間分の残業代にあたるかは書いていません。退職した社員から、残業代の未払分を払ってほしいと連絡がありました。この場合、固定残業代が有効かどうかが問題になります。

法律の整理

固定残業代が有効と認められるには、通常の賃金と割増賃金部分が判別できること(判別可能性)と、超過分を精算することが必要です。時間数と金額が示されていないと、どの部分が割増賃金なのかを判別しにくくなります。また、厚生労働省は、募集・採用の際に、固定残業代の金額、何時間分の時間外労働に当たるか、超過分を追加で支払う旨を明示するよう求めています(若者雇用促進法に基づく指針)。

無効と判断された場合は、固定残業代を含めた額が基礎賃金となります。会社は、固定残業代として払った額とは別に割増賃金を払うことになり、割増賃金を二重に支払う結果になります。

根拠となる考え方は次のとおりです。労働基準法の割増賃金について、厚生労働省は、時間外に労働させた場合には「1時間当たりの賃金の25%以上増し」の割増賃金を払わなければならないと説明しています。1か月に60時間を超える時間外労働は「50%以上増し」です。

月給制では「月給額(各種手当を含んだ合計)」を1か月平均所定労働時間数で割り、1時間当たりの賃金を出します。基礎から除ける手当は家族手当・通勤手当・住宅手当などに限られ、「例示ではなく限定的に列挙されているもの」とされています。「これらに該当しない賃金はすべて算入しなければなりません」とも書かれています。

労働時間の把握に関するガイドライン(H29.1.20基発0120第3号)は、「時間外労働手当の定額払等」が労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかを確認するよう求めています。

会社が備えること

確認すること

  • 賃金規程・雇用契約書で、固定残業代をどの手当として定めているか
  • 基本給と固定残業代の額が分けて書かれているか
  • 固定残業代が何時間分の時間外労働にあたるかを示しているか
  • 実際の時間外労働の時間を記録しているか
  • 固定残業代を超えた分を、毎月の給与で払っているか

基本給と手当を分ける

給与担当者が給与明細の基本給と手当の欄を分けて示し、契約書と確認する場面。
基本給と固定残業代の額が分けて書かれているか

対応

  • 賃金規程と雇用契約書に、基本給と固定残業代の額を分けて書きます。
  • 固定残業代が何時間分の時間外労働にあたるかを、金額とあわせて示します。
  • 労働条件通知書にも、固定残業代の時間数と金額を書きます。明示のルールは労働条件明示のルールが変わりましたで説明しています。
  • 始業・終業時刻を記録し、実際の割増賃金が固定残業代を超えた月は、差額を払います。
  • 1か月に60時間を超える時間外労働は、50%以上の割増率で計算します。

実際の時間と差額を照合

担当者が勤怠表と給与の記録を照合し、追加支払の資料を確認する場面。
始業・終業時刻を記録し、実際の割増賃金が固定残業代を超えた月は、差額を払います。

ご相談で伺うこと

  • 賃金規程・就業規則・雇用契約書・労働条件通知書
  • 直近の給与明細と賃金台帳
  • タイムカードなど労働時間の記録
  • 固定残業代を導入したときの、社員への説明の内容
  • 社員から請求やお問い合わせが来ているかどうか

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出典