何が問題になるか
場面
家族や警察から、社員が逮捕されたと会社に連絡が入ることがあります。本人とは直接話せず、事実関係もはっきりしません。出勤できない日が続き、報道や取引先からの問い合わせが来ることもあります。このとき、すぐに解雇してよいか、欠勤をどう扱うか、外部に何を伝えるかが問題になります。
法律の整理
逮捕の事実だけでは有罪ではありません。そのため、逮捕を理由に直ちに解雇することはできません。無罪推定を前提に、行為と業務との関連や、会社の信用への影響を見て判断します。私生活上の犯罪を理由とする懲戒は、限られた場面にとどまります。有罪が確定した場合の懲戒も、就業規則の懲戒事由に当たるかと、処分の相当性で判断します。
逮捕の段階では判断を急がない

根拠は労働契約法です。労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。第15条は、懲戒について、「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効とすると定めています。
また、刑事訴訟法第30条は、第1項で、「被告人又は被疑者は、何時でも弁護人を選任することができる。」と定めています。第2項では、配偶者や直系の親族なども、独立して弁護人を選任できると定めています。会社が本人の状況を確かめるときは、家族や弁護人を通じることになります。
会社が備えること
確認すること
- 誰から、いつ、どのような内容の連絡があったか
- 勾留中の欠勤を、欠勤・休職・年次有給休暇のどれで扱うか
- 就業規則に起訴休職の規定があるか、その要件と期間
- 疑われている行為と業務との関連、会社の信用への影響
- 就業規則の懲戒事由と、懲戒の手続の定め
対応
本人・家族・弁護人との連絡窓口を一本化します。やり取りの日時と内容は記録に残します。社内外への情報の出し方も決めます。報道や取引先から問い合わせがあった場合に、誰が、どこまで答えるかを定めておきます。社内で伝える範囲も、あわせて決めます。
連絡窓口と情報の出し方

勾留中の勤怠は、確認した就業規則の定めに沿って扱います。逮捕の段階では、懲戒の判断を急ぎません。有罪が確定した場合は、就業規則の事由と相当性に照らして判断します。懲戒の手続は社員を懲戒処分にしたい。手続はどこまで必要ですかで整理しています。外部への情報の出し方は社員のSNS投稿が炎上しました。会社として何をすべきですかの考え方も参考になります。
ご相談で伺うこと
- 逮捕の連絡を受けた経緯と、現在わかっている事実
- 疑われている行為の内容と、業務との関連
- 社員の職種・役職と、取引先や報道への影響の有無
- 就業規則の懲戒事由と休職規定(起訴休職を含む)の定め
- 勾留中の勤怠の現在の扱い
- 本人・家族・弁護人との連絡の状況