何が問題になるか
場面
新しい取引先から、先方のひな形で作った契約書が送られてきました。担当者からは、いつもこの書式で結んでいると言われ、早めの押印を求められています。どの条項を読み、どこを直してもらうべきかが分からないまま、署名の期限が近づいています。
法律の整理
自社に一方的に不利な条項は、修正案を書面で出します。典型は、賠償額に上限のない定め、自動更新でありながら中途解約ができない定め、先方が一方的に仕様を変更できる定めです。口頭で伝えるだけでは、どの条項をどう直すよう求めたのかが記録に残りません。
また、先方のひな形が定型約款として扱われる場合でも、不当な条項は効力が否定され得ます(民法の定型約款の定め)。
民法は、契約の総則の中に「第五款 定型約款」を置き、その範囲を「第五百四十八条の二―第五百四十八条の四」としています。解除は「第四款 契約の解除」(第540条から第548条まで)に、損害賠償は「第一款 債務不履行の責任等」(第412条から第422条の2まで)に定めがあります。ひな形の解除条項や賠償条項を読むときは、こうした民法の定めと見比べて、どこが自社に重くなっているかを確かめます。
優先して見る条項を押さえる

会社が備えること
確認すること
ひな形を受け取ったら、全文を均等に読む前に、優先して見る条項を押さえます。
- 損害賠償の範囲と上限、免責の定め
- 解除事由と、解除の予告期間
- 成果物などの知的財産権の帰属
- 秘密保持の範囲と期間
- 反社会的勢力の排除条項(反社条項)
- 準拠法と、紛争時の管轄裁判所
あわせて、自動更新の定めがあるか、中途解約ができるか、先方が仕様を一方的に変更できる定めがないかを確認します。反社条項を置く意味は、契約書の反社会的勢力排除条項は、なぜ入れるのですかで整理しています。
対応
- 優先して見る条項に印を付け、賠償の上限額や解除の予告期間について、自社の希望を社内で決めます。
- 不利な条項ごとに、修正後の文案と理由を書いた書面を作り、先方に送ります。
- 先方とのやり取りは、メールや修正履歴の付いた文書で残します。
- 修正に応じてもらえないときの判断基準を、交渉の前に社内で決めておきます。想定される損害の大きさと取引の規模を比べること、保険や社内の体制で負担を抑えられるか、条項を受け入れてでも取引を続ける必要があるか、といった観点で検討します。
修正後の文案と理由を書面にする

ご相談で伺うこと
- 取引の内容、金額、期間
- 先方から受け取ったひな形と、これまでのやり取り
- 自社として受け入れにくい条項と、その理由
- 署名の期限と、取引開始の予定時期
- 修正に応じてもらえない場合に、取引を見送る余地があるか