何が問題になるか

場面

長く取引してきた会社から、破産手続開始の申立てをしたという通知が届きました。納品済みの商品の代金が、まだ売掛金として残っています。受け取った手形の期日も近づいています。担当者からは、在庫の商品を引き取りに行きたいという声も出ています。売掛金がどうなるのか、商品を引き揚げてよいのか、自社の資金繰りは持つのかを確かめたい、というご相談です。

法律の整理

破産手続開始の決定の後は、売掛金を個別に取り立てることはできません。相殺を除き、債権届出をして配当を待つことになります。配当率は低いことが多くあります。

破産法は、第2条で、言葉の意味を定めています。第5項は、「破産債権」を「破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権」と定めています。開始前の取引で生じた売掛金は、これに当たります。法律の目次にも、「破産債権の届出」の節と、「相殺権」の款が置かれています。

開始前であれば、自社の債務と売掛金の相殺、所有権留保、動産売買先取特権が使える場合があります。第2条は、第9項で、「別除権」を、「特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者」が、その権利の目的である財産について「行使することができる権利」と定めています。動産売買先取特権を使う場面では、この規定との関係を確かめます。

ただし、納品済みの商品を引き揚げるには、相手の同意が要ります。同意を得ずに持ち出すことはできません。

開始の決定の後は債権届出

破産手続の書類と売掛金の資料を照合し、期限までの債権届出を準備する担当者
開始の決定の後は、裁判所から届く書類に従い、期限までに債権届出をします。

会社が備えること

確認すること

  • 相手が申立てをしただけか、裁判所が破産手続開始の決定をしたか
  • 売掛金の額と弁済期、受け取った手形・電子記録債権の期日
  • 自社が相手に支払う買掛金などの債務があるか
  • 契約書や取引基本契約に、所有権留保の定めがあるか
  • 代表者などの保証、信用保証、取引信用保険の有無
  • 納品済みの商品が、相手の倉庫などに残っているか

対応

  • 相手の状況が申立てか開始の決定かを、通知書や官報で確かめます。破産法は、第10条で、「この法律の規定による公告は、官報に掲載してする」と定めています
  • 開始の決定の後に、相手に個別に支払を求めたり、商品を持ち出したりすることは控えます
  • 相殺できる債務があるかを、経理の担当者と洗い出します
  • 開始の決定の後は、裁判所から届く書類に従い、期限までに債権届出をします
  • 手形・電子記録債権の不渡りの有無と、信用保証、取引信用保険の請求の条件を確認します
  • 自社の資金繰りを見直し、連鎖倒産を防ぐ手当てを考えます。中小企業庁は、「政府系金融機関による融資、信用保証協会による保証等、中小企業の資金繰りを支援しています」としています。セーフティネット保証制度の利用は、取引のある金融機関や信用保証協会に相談します

同意を得ずに商品を持ち出さない

取引先の倉庫に残る商品を前に、持ち出す前の同意と契約を確認する担当者
納品済みの商品を引き揚げるには、相手の同意が要ります。同意を得ずに持ち出すことはできません。

ご相談で伺うこと

  • 取引の経過と、売掛金・手形の明細
  • 契約書・注文書・納品書
  • 相手から届いた通知書や裁判所の書類
  • 自社が相手に負っている債務の内容
  • 保証・保険の契約書
  • 当面の資金繰りの見通しと、取引を続けるかどうかの方針

出典