何が変わったか

労務費転嫁指針の改正

公正取引委員会のページでは、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(以下「指針」)は、令和5年11月29日に内閣官房と公正取引委員会が策定し、令和8年1月1日に改正されたと示されています。改正については、令和7年12月26日付けの案内が掲載されています。策定時の内容は労務費の転嫁交渉は「発注側から」── 公正取引委員会の指針(2023年11月)で紹介しています。

改正後の指針は、法令の呼び方として「中小受託取引適正化法」を用いています。名称の変更は下請法が中小受託取引適正化法(取適法)になりましたで紹介しています。

価格交渉促進月間の位置づけ

指針は、受注者から求めがなくても、発注者から定期的に協議の場を設けることを求めています。頻度の例として、「業界の慣行に応じて1年に1回や半年に1回(例えば、毎年3月と9月の価格交渉促進月間)」と書いています。

発注者から協議の場を設ける

発注する側が受注する側へ協議の案内を送り、価格の資料を用意する場面。
指針は、受注者から求めがなくても、発注者から定期的に協議の場を設けることを求めています。

指針の性格

指針は、発注者と受注者が採るべき行動を12の行動指針としてまとめています。発注者が行動に沿わない行為をして公正な競争を阻害するおそれがある場合、公正取引委員会は独占禁止法と中小受託取引適正化法に基づき「厳正に対処していく」としています。他方で、第2の1と3に記載の全ての行動を適切に採っている場合は、通常は両法上の問題は生じないと考えられる、と記しています。

会社が備えること

発注する側

指針が発注者に挙げる行動には、次のものがあります。

  • 労務費の上昇分の転嫁を受け入れる取組方針を経営トップまで上げて決定し、書面等の形に残る方法で社内外に示すこと
  • 求めがなくても、定期的に発注者から協議の場を設けること
  • 根拠資料を求める場合は、公表資料(最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率など)に基づくものとすること
  • 直接の取引先がその先の取引先との価格を適正化すべき立場にいることを、要請額の妥当性の判断に反映させること

受注する側

受注者には、国・地方公共団体や中小企業の支援機関に相談するなどして情報を集めることが挙げられています。根拠資料に公表資料を用いることや、適切なタイミングで自ら価格転嫁を求めることも挙げられています。

双方に共通すること

定期的にコミュニケーションをとる機会を設けることが挙げられています。価格交渉の記録を作成して、発注者と受注者の双方が保管することも求められています。

価格交渉の記録

交渉の内容を同じ記録にまとめ、双方が写しを保管する場面。
価格交渉の記録を作成して、発注者と受注者の双方が保管することも求められています。

注意点

「留意すべき点」の記述

指針は、明示的に協議することなく取引価格を長年据え置くことについて、独占禁止法上の優越的地位の濫用や中小受託取引適正化法上の買いたたきとして問題となるおそれがある、と記しています。協議の要請に応じず一方的に価格を据え置くことは、協議に応じない一方的な代金決定として問題となるおそれがある、とも記しています。公表資料が出されているのに、さらに内部情報まで求めることにも、同じ趣旨の記述があります。

法律が当てはまる前提

指針の注では、中小受託取引適正化法上問題となるのは、同法第2条第1項から第5項までに規定する製造委託などに該当することが前提となる、とされています。自社の取引がどれに当たるかは、条文と運用基準で確かめる必要があります。

この記事の出典に無い事項

中小企業庁が価格交渉促進月間の後に公表する調査結果、発注側企業ごとの評価、評価が低い企業への指導・助言の仕組みは、この記事の出典には記載がありません。これらは中小企業庁の公表資料で確かめてください。

出典