何が変わったか
認定基準の見直しの内容
脳・心臓疾患の労災認定基準が改正され、適用されています。
長時間労働の評価では、発症前の時間外労働の目安(いわゆる「過労死ライン」)に加え、これに近い時間外労働と、労働時間以外の負荷要因を総合的に評価する考え方が示されています。
労働時間以外の負荷要因として、勤務間インターバルが短い勤務や、休日のない連続勤務などが明記されました。
労働時間以外の負荷要因

認定基準そのものは、厚生労働省の「業務上疾病の認定等」のページで紹介されています。同ページは、脳・心臓疾患、精神障害、石綿による疾病などの労災認定基準を紹介するものです。精神障害の認定基準は、精神障害の労災認定基準についての法改正コラムで扱っています。
労災保険の仕組みとの関係
労災保険制度は、労働者の業務上の事由または通勤による傷病等に対して、必要な保険給付を行う制度です。費用は、原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれています。
労災保険は、原則として一人でも労働者を使用する事業に、業種の規模を問わず適用されます。アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。
複数の会社で働く人の評価
労働者災害補償保険法の2020年の改正(施行日は2020年9月1日)により、すべての会社の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して、労災認定を判断するようになりました。同法第7条第1項第2号は、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病等を「複数業務要因災害」と定めています。
複数の会社で働く人の評価

会社が備えること
労働時間の把握
認定基準では、時間外労働の長さに加え、勤務の間隔や休日の取り方も負荷要因として挙げられています。社内の労働時間管理では、次の項目を見直す対象にできます。
- 時間外労働の時間数を、月ごとと複数月の平均で把握しているか
- 終業から次の始業までの間隔(勤務間インターバル)を記録しているか
- 休日のない連続勤務が生じていないか
- 副業・兼業をしている社員の勤務状況を把握する手順があるか
時間外労働の割増賃金については、時間外労働の割増率についての法改正コラムで扱っています。
労災保険に関する周知と手続
労災保険法施行規則第49条第1項は、事業主が労働者に対して、労災保険法に関する法令の要旨等を周知することを義務づけています。2024年4月1日からは、電磁的方法による周知も可能になりました。
労災保険関係の請求書等は、押印又は署名が無くても受け付ける取扱いに見直されています。
注意点
事業主の証明と報告
労働者災害補償保険法第12条の3は、事業主が虚偽の報告又は証明をしたため保険給付が行われたときについて定めています。この場合、政府は事業主に対し、保険給付を受けた者と連帯して徴収金を納付すべきことを命ずることができます。
厚生労働省は、故意に労働者死傷病報告を提出しないことや、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出することを「労災かくし」としています。これには罰則を適用して厳しく処罰を求めるなど、厳正に対処するとしています。
加入手続を怠っていた場合
事業主が労災保険の加入手続を怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、遡って保険料が徴収されます。そのほかに、労災保険から給付を受けた金額の100%または40%が事業主から徴収されます。
認定基準の位置づけ
認定基準は、労災認定の判断に用いる基準として厚生労働省が紹介しているものです。個別の事案が業務上と認められるかどうかは、この記事では扱いません。