何が変わったか

マニュアルが改訂されました

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」は、2021年度に作成されました。2026年9月には、法改正などの内容を反映した改訂版がまとめられました。

改訂の背景には、労働施策総合推進法の改正があります。改正法(令和7年法律第63号)は2025年6月11日に公布されました。この改正で、カスタマーハラスメントの防止措置が事業主の義務となり、2026年10月1日から施行されています。義務の全体像はカスタマーハラスメント対策が事業主の義務になりますで紹介しています。

マニュアルは、この義務が業種・業態を問わず、すべての事業主に課されると説明しています。「顧客等」には一般消費者のほか、取引の相手方なども含まれます。

指針が示す措置の項目

措置の具体的な内容は、カスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)に定められています。マニュアルは、指針が示す措置を次のとおり挙げています。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • カスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  • 対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置
  • そのほか併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止)

会社が備えること

社内の運用で見直す事項

方針の面では、カスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護するという方針を明確にして、周知・啓発することが挙げられています。カスタマーハラスメントの内容と、その対処の内容を労働者に周知することも示されています。

労働者を保護する方針

接客する従業員を支える責任者が顧客対応を引き継ぐ場面
カスタマーハラスメントの内容と、その対処の内容を労働者に周知することも示されています。

相談の面では、相談窓口をあらかじめ定めて周知することと、窓口担当者が適切に対応できるようにすることが示されています。事後の対応としては、事実関係を迅速かつ正確に確認すること、被害者への配慮のための措置を適正に行うこと、再発防止に向けた措置を講ずることが並んでいます。

抑止の面では、特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、その対処を行える体制を整備することが挙げられています。

正当な苦情との線引き

指針の定義では、①顧客等の言動であって、②社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもので、①から③までの要素を全て満たすものとしています。マニュアルは、顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではないと記載しています。

苦情の全てが該当するわけではない

商品について穏やかに説明を求める客と、状況を確認する担当者
マニュアルは、顧客等からの苦情の全てがカスタマーハラスメントに該当するわけではないと記載しています。

範囲を超える言動とは、「言動の内容」が契約内容からして相当性を欠くもの、または「手段や態様」が相当でないものとされています。どちらか一方だけが範囲を超える場合でも該当し得る点に、留意が必要とされています。判断にあたっては、言動の目的、経緯や状況、業種・業態、言動の態様・頻度・継続性などを総合的に考慮することが適当とされています。

注意点

マニュアルは、使用者には労働契約法第5条に基づく安全配慮義務があると説明しています。対応を怠った結果、従業員の心身に被害が生じた場合は、損害賠償請求等を受ける可能性があるとしています。対応が不十分な場合は、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となり得るとも記載しています。

また、障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントには当たらないとされています。

出典