何が問題になるか
場面
業績の悪化を受けて、就業規則や賃金規程を改め、住宅手当や家族手当を減らしたい、あるいは廃止したいという場面です。社員一人ひとりの同意を取る必要があるのか、就業規則を書き換えて届け出れば足りるのかが問題になります。
法律の整理
労働者に不利益な就業規則の変更は、原則として労働者の同意が必要です。同意を得ずに変更するには、変更に合理性があり、変更後の就業規則を周知していることが必要です。合理性は、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉の状況から判断されます。手当や退職金など賃金の不利益変更には、高度の必要性が求められます。
根拠は労働契約法です。第9条は、使用者は「労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定めています。そのただし書で、次条の場合を除いています。
第10条は、変更後の就業規則を「労働者に周知させ」、かつ変更が「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」であるときは、労働条件は変更後の就業規則によるとしています。同条のただし書は、「就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分」を除いています。
変更の手続は、第11条で、労働基準法第89条と第90条によるとされています。厚生労働省は、常時10人以上の従業員を使用する使用者について、「就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません」と案内しています。
会社が備えること
確認すること
- 変更で不利益を受ける社員の範囲と、一人あたりの減少額
- 手当を減らす理由(経営状況の数字、人件費の見通し)
- 個別の労働契約で、手当の額を就業規則とは別に約束していないか
- 労働組合や過半数代表者がいるか
- 現行の就業規則が社員に周知されているか
変更前後の影響を比べる

対応
手当を減らす前に、次の順で準備します。
- 現行と変更後の比較表を作り、社員ごとの減少額を示す
- 説明会を開き、変更の理由と内容を説明する
- 労働組合または過半数代表者から意見を聴く
- 経過措置を設ける(段階的な減額、代償となる措置)
- 変更後の就業規則を届け出て、社員に周知する
個別に同意書を取る場合も、署名があれば足りるわけではありません。同意は、社員の自由な意思に基づくものであることが必要です。説明に使った資料と説明の経過は、記録に残しておきます。
理由を説明し意見を聴く

ご相談で伺うこと
- 現行の就業規則・賃金規程と変更案
- 減らしたい手当の種類と、社員ごとの影響額
- 変更が必要な理由を示す資料(決算書、人件費の推移など)
- 労働組合・過半数代表者との協議の状況
- 説明会の資料や同意書の案があるか