何が問題になるか

場面

株主の一人から、会計帳簿の閲覧と謄写を書面で求められることがあります。親族で株式を分け合う会社や、経営から離れた元役員がまだ株式を持っている会社で起こることがあります。書面には、役員報酬が妥当かを確かめたい、といった理由が書かれています。会社は、どこまで応じる義務があるのかを判断する必要があります。

法律の整理

議決権または発行済株式の百分の三以上を持つ株主は、理由を明らかにして、会計帳簿とこれに関する資料の閲覧・謄写を請求できます。会社が拒めるのは、法律が定める事由に当たる場合だけです。

会社法の「会計帳簿の閲覧等の請求」の条文は、第1項で、この割合以上を持つ株主が「株式会社の営業時間内は、いつでも」請求できると定めています。そのうえで、請求は「当該請求の理由を明らかにしてしなければならない」としています。この割合は、定款でさらに低くすることもできます。

同じ条文は、第2項で、次のいずれかに当たる場合を除き、会社は「これを拒むことができない」と定めています。

  • 権利の確保や行使に関する調査とは別の目的で請求したとき
  • 会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求したとき
  • 請求者が「実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するもの」であるとき
  • 閲覧で知った事実を、利益を得て第三者に知らせるために請求したとき、または過去二年以内にそうしたことがあるとき

計算書類、株主名簿、議事録は、会計帳簿とは要件が違います。これらの中には、持株の割合に関係なく、株式を1株しか持たない株主でも閲覧できるものがあります。

会社が拒んだ場合、株主は裁判所に閲覧の仮処分を申し立てたり、訴えを起こしたりできます。

会社が備えること

確認すること

  • 請求者の議決権または株式の数が、百分の三(定款で下げていればその割合)以上か
  • 請求の理由が具体的に書かれているか
  • 求められている帳簿・資料の範囲が、理由とつながっているか
  • 競業する事業との関わりなど、拒否事由に当たる事情があるか
  • 求められているのは会計帳簿か、それとも計算書類・株主名簿・議事録か

対応

請求の書面を受け取ったら、届いた日と請求の内容を記録します。次に、理由が具体的かを確かめます。理由があいまいなときは、どの取引のどの点を確かめたいのかを書面で尋ねます。

請求の理由と対象を確認する

株主の請求書と持株の資料、求める帳簿を照らす会社担当者
次に、理由が具体的かを確かめます。

対象の範囲を決めたら、閲覧の日時・場所・方法を決めて回答します。拒否事由に当たると判断する場合は、その根拠となる事実を整理し、拒む理由を書面で伝えます。根拠が弱いまま拒むと、仮処分や訴えに進むおそれがあります。

計算書類や議事録もあわせて求められている場合は、書類ごとに要件を分けて対応します。

書類ごとに要件を分ける

会計帳簿と議事録などを別の資料として区分する担当者
計算書類や議事録もあわせて求められている場合は、書類ごとに要件を分けて対応します。

ご相談で伺うこと

  • 請求の書面(届いた日、書かれている理由と対象)
  • 請求者の持株数と、定款の定め
  • 請求者と会社の関係(役員だった経歴、競業する事業との関わり)
  • これまでの株主とのやり取り
  • 開示に慎重になるべき資料と、その内容

株主との対立が役員の地位をめぐる問題にまで及んでいる場合は、任期の途中で取締役を解任したい。手続と損害賠償のリスクはもあわせてご覧ください。

出典