何が問題になるか
場面
代表取締役である社長が急に亡くなると、会社を代表する人がいなくなります。取引先との契約や銀行の手続を、誰の名前で進めるかが決まらなくなります。社長が株式の大半を持っていた会社では、株主総会で議決権を誰が使うかも問題になります。相続人が経営に関わっていない場合は、会社の事情がわからないまま時間が過ぎてしまいます。
法律の整理
代表取締役の死亡で代表者が不在になるため、取締役会または株主総会で新たな代表者を選び、登記します。取締役が1人の会社では、株主総会で後任を選任します。
新たな代表者を選び登記する

株式は相続人の準共有となります。遺産分割が終わるまでは、権利行使者を1人定めて会社に通知しなければ、議決権を行使できません。根拠は、会社法の「共有者による権利の行使」の規定です。この規定は、「株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない」と定めています。
権利行使者を定めて通知する

このほか、銀行口座・契約・許認可の名義と、相続人の相続放棄の期限も確認が要ります。
会社が備えること
確認すること
- 定款で、代表取締役を取締役会と株主総会のどちらで選ぶ定めになっているか
- 残った取締役の人数と、取締役会を置いているか
- 亡くなった社長が持っていた株式の数と、相続人が誰か
- 銀行口座、取引先との契約、許認可の名義が社長個人か会社か
- 相続人が相続放棄を考えているか、その期限がいつか
対応
取締役会のある会社は、取締役会で新しい代表取締役を選び、登記を申請します。取締役が1人の会社は、株主総会を開いて後任を選任します。株式が相続されている場合は、株主総会の前に、相続人の間で権利行使者を1人決めて会社へ通知してもらいます。
銀行口座・契約・許認可は、名義の変更や届出が要るものを一覧にして、順に手続を進めます。相続放棄には期限があるため、相続人には会社の財産と負債の状況を早めに伝えます。
社長が元気なうちの備えとしては、事業承継税制の利用、遺言の作成、種類株式の活用があります。種類株式は、会社法が「異なる種類の株式」として定めています。税制の期限は事業承継税制の特例措置のコラムで取り上げています。中小企業庁も「事業承継ガイドライン」を公表しています。
ご相談で伺うこと
ご相談では、次の資料と事情を伺います。
- 定款と登記事項証明書の内容
- 取締役・監査役の人数と、取締役会の有無
- 株主名簿と、亡くなった社長の持株数
- 相続人の構成と、遺言の有無
- 社長名義の口座・契約・許認可の一覧
- 社長の個人保証や、会社への貸付の有無