何が変わったか
資金移動業者の口座への支払が加わりました
賃金の支払方法は、通貨のほか、労働者の同意を得た場合には、銀行その他の金融機関の口座への振込み等によることができるとされています。
2023年4月から、これに資金移動業者の口座への資金移動が加わりました。厚生労働省は、これを「賃金のデジタル払い」と呼んでいます。根拠は、労働基準法施行規則第7条の2です。改正省令は2022年11月28日に公布されました。
使える資金移動業者は、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の指定を受けた業者に限られます。現金化できないポイントや暗号資産での賃金支払いは認められません。
厚生労働省の資料は、この制度が労働者だけでなく使用者に対しても導入を強制するものではないとしています。
会社が備えること
事業場で必要な手続き
厚生労働省の資料では、導入の手続きを次のように説明しています。
- 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合と、ない場合は労働者の過半数を代表する者と、労使協定を締結します。
- 労使協定には、賃金のデジタル払いの対象となる労働者の範囲や、取扱指定資金移動業者の範囲等を記載します。
- 希望する労働者に留意事項等を説明します。労働者は、受け取る賃金額、資金移動業者口座番号、指定代替口座情報等を同意書に記載して、使用者に提出します。
労働者の過半数を代表する者の要件は、施行規則第6条の2に定めがあります。監督又は管理の地位にある者でないこと、投票・挙手等の方法による手続で選出され、使用者の意向に基づき選出されたものでないことが挙げられています。
労使協定がない事業場で労働者がデジタル払いを希望した場合について、資料は、協定を締結するかどうかを労使で話し合うよう求めています。
労使協定に対象と取扱範囲を記載
労働者への説明と同意の取り方
第7条の2のただし書は、デジタル払いによる場合の手順を定めています。労働者が銀行口座などへの支払を選べるようにすること、同条第3号イからヘまでの要件に関する事項を説明した上で同意を得ることです。
資料も、デジタル払いを提示する際は、銀行口座か証券総合口座をあわせて提示しなければならないとしています。説明する留意事項は、同意書の様式例の裏面に記載されています。
留意事項の一つとして、資金移動業者口座は「預金」をするためではなく、支払や送金に用いるためのものであることが示されています。
銀行口座なども提示し、説明した上で同意を得る
指定を受けた資金移動業者
取扱指定資金移動業者は、厚生労働大臣が指定した業者の中から選びます。厚生労働省のページには「指定資金移動業者一覧」が掲載されています。
2026年7月1日現在、指定を受けた業者は4社です。業者ごとに、労働者指定口座の受入上限額(10万円から30万円)や、同意書に記載が必要な情報が異なります。業者が破綻した場合は、口座の残高が保証機関から弁済されます。具体的な弁済方法は、業者ごとに異なるとされています。
手続と注意点
- 希望しない労働者に強制してはいけません。本人の同意がない場合や強制した場合は、労働基準法違反となり、罰則の対象になり得ると資料は説明しています。
- デジタル払いを導入した事業場でも、全ての労働者の受け取り方法を変える必要はありません。
- 賃金の一部だけを資金移動業者口座で受け取り、残りを銀行口座などで受け取ることもできます。
- デジタル払いを選んだ後に、受け取り方法を銀行口座などへ変えることもできます。
賃金の支払の方法は、施行規則第5条に定める労働条件の明示事項にも含まれています。明示のルールは労働条件明示のルールが変わりましたで紹介しています。
