何が変わるか

標準報酬月額の上限が65万円から75万円へ

2025年6月13日、年金制度改正法が成立しました。正式名は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」(令和7年法律第74号)です。この法律には、厚生年金保険等の標準報酬月額の上限を段階的に引き上げる措置が含まれています。

標準報酬月額は、保険料と年金額の計算に使う額です。厚生労働省の資料は、上限を65万円から75万円に3年間かけて引き上げるとしています。施行日は次のとおりです。

  • 2027年9月1日:上限を68万円へ引上げ
  • 2028年9月1日:上限を71万円へ引上げ
  • 2029年9月1日:上限を75万円へ引上げ

上限を段階的に引き上げ

標準報酬月額の上限が段階的に上がる。
厚生労働省の資料は、上限を65万円から75万円に3年間かけて引き上げるとしています。

資料は、最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づき、上限を改定できるルールを導入することにも触れています。

引上げのねらい

資料によると、上限を超える収入の方は、実際の賃金に占める保険料の割合が他の方よりも低くなっています。改正は、こうした方に本来の賃金に応じた負担を求め、将来の給付を手厚くするためのものと説明されています。厚生年金保険では、上限である標準報酬65万円以上の人の割合が9.6%(243万人)と示されています(2024年6月の値)。

影響を受ける報酬の範囲

資料の表では、報酬月額(賞与を除く賃金)ごとに、引上げ後の標準報酬月額が示されています。

  • 66.5万円〜69.5万円:68万円
  • 69.5万円〜73.0万円:71万円
  • 73.0万円〜:75万円

報酬月額が63.5万円〜66.5万円の区分は、引上げ後も65万円のままです。表のうえでは、報酬月額が66.5万円に届かない人の保険料は変わりません。

保険料の変化

資料は、該当者の保険料を「標準報酬月額×保険料率×1/2」として示しています。表に示された月額は次のとおりです。

  • 68万円の区分:59,475円→62,220円
  • 71万円の区分:59,475円→64,965円
  • 75万円の区分:59,475円→68,625円

この額は本人が負担する分です。会社が負担する保険料も同じように増えるため、該当する役員・従業員が多い会社ほど人件費への影響が大きくなります。

会社が負担する保険料

本人の負担と会社の負担の増加を人件費に反映する。
会社が負担する保険料も同じように増えるため、該当する役員・従業員が多い会社ほど人件費への影響が大きくなります。

あわせて、年金額も増えると説明されています。75万円の区分に1年間該当した場合、年金額は月に約510円(終身)増えるという概算が示されています。

会社が備えること

会社が見直すこと

上限の引上げは、報酬が高い役員や従業員がいる会社の人件費に関わります。次の点を見直します。

  • 役員を含めて報酬月額を確認し、66.5万円以上の人を把握します。
  • 2027年9月、2028年9月、2029年9月の各段階で、会社負担の保険料の増加額を人件費の見込みに反映します。
  • 役員報酬の額を決めるときに、保険料が段階的に増えることを織り込みます。
  • 該当する人には、手取りが変わることを前もって伝えます。

注意点

資料の表にある「実質的な負担増額」(68万円の区分で月約1,800円など)は概算です。社会保険料控除を考慮し、限界税率を所得税23%・住民税10%と仮定して計算されています。個々の負担は、本人の税率などで変わります。

上限は、最高等級の者の割合に基づいて改定できるルールの導入も示されています。75万円となった後の扱いは、厚生労働省の公表を確認します。

同じ法律には、短時間労働者の社会保険の加入対象の拡大も含まれています。詳しくはパートの社会保険加入、2026年10月から賃金要件が撤廃で紹介しています。

出典