何が変わったか
事案
最高裁判所第二小法廷は、令和6年4月26日、損害賠償等請求事件(令和5(受)604)について判決を言い渡しました。裁判例検索の表記では、裁判種別は判決、結果は破棄差戻です。判例集等の欄には「集民 第271号109頁」と記載されています。
事案は、福祉用具の技術職として採用された労働者を、使用者がその同意を得ることなく総務課へ配置転換したというものです。判示事項は、この事件を、労働者と使用者との間に当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合の事例として示しています。
原審は大阪高等裁判所です。原審事件番号は令和4(ネ)1373、原審裁判年月日は令和4年11月24日です。原審は、この配置転換命令について、配置転換命令権の濫用に当たらないと判断していました。参照法条には、労働契約法3条1項と労働契約法8条が挙げられています。
判断
裁判要旨は次のとおりです。
「労働者と使用者との間に当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意がある場合において、使用者が当該労働者に対してその同意を得ることなくした異なる職種等への配置転換命令につき、使用者が同命令をする権限を有していたことを前提として、その濫用に当たらないとした原審の判断には、違法がある。」
判示事項も、同じ事例を「配置転換命令権の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例」と記しています。
要旨の文言では、合意の内容は「当該労働者の職種及び業務内容を特定のものに限定する旨の合意」とされています。命令は「その同意を得ることなくした異なる職種等への配置転換命令」とされています。これらの要素がそろった場面について、判断が示されています。
要旨が違法とした点は、原審が、使用者が同命令をする権限を有していたことを前提にして、濫用に当たるかどうかを判断した点です。判決は、職種限定の合意がある場合、使用者は労働者の同意なく他の職種への配置転換を命ずる権限を有しないという立場に立っています。結果は破棄差戻であり、事件は原審に差し戻されました。
職種及び業務内容を限定する合意

会社が備えること
裁判要旨は、配置転換命令権の濫用を検討する前に、使用者が命令をする権限を有していたかどうかを問題にしています。その権限の有無には、職種及び業務内容を限定する旨の合意の有無が関わります。実務では、次の点が確認の項目になります。
- 採用時に、職種や業務内容を特定のものに限定する旨の合意をしたかどうかを、労働契約書や労働条件通知書で確認すること
- 他の部署への異動を予定している場合に、その職種が採用時に合意した職種及び業務内容の範囲内かどうかを確認すること
- 職種限定の合意がある労働者を異なる職種へ配置転換する場合に、本人の同意を得る手順を社内で定めておくこと
- 採用時に職種限定の有無を明確にし、業務の変更の範囲を労働条件通知書に記載すること
労働条件通知書に記載する変更の範囲については、労働条件明示のルールが変わりましたで紹介しています。
注意点
判示事項は、本判決を個別の事案についての「事例」として示しています。配置転換を検討するときは、その労働者との採用時の合意の内容を個別に確認することが前提になります。
本人の同意を得る手順
