何が問題になるか

場面

社員が始業時刻に遅れて出社したり、終業時刻の前に早退したりすることがあります。給与の計算で、その時間分を差し引いてよいかというご相談です。遅刻が続く社員について、実際に遅れた時間より多めに差し引いて、戒めにしたいというお話も伺います。

法律の整理

働いていない時間分の賃金を支払わないことは可能です。これをノーワーク・ノーペイといいます。ただし、遅刻した時間を超えて差し引くことは「減給の制裁」に当たります。減給の制裁には労働基準法で上限があり、1回の額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。総額にも、賃金総額を基準とした上限があります。遅刻の常習への対応は、賃金控除ではなく、注意・指導・懲戒で行います。

根拠となる条文を確認します。労働基準法第11条は、賃金を「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定めています。賃金は労働の対償なので、働いていない時間分は支払わないことができます。

減給の上限の基準となる平均賃金は、第12条が定めています。同条は、第1項で、平均賃金を「これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」としています。

控除の根拠は、就業規則に定めます。厚生労働省は、常時10人以上の従業員を使用する使用者は「労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない」と説明しています。就業規則を変更する場合も、同じく届出が必要です。

分単位の切上げ処理にも注意が必要です。実際に遅れた時間を切り上げて、より長い時間分を差し引くと、遅刻した時間を超える控除になり得ます。

会社が備えること

確認すること

  • 就業規則や賃金規程に、遅刻・早退の時間分を控除する定めがあるか
  • 控除の計算を分単位で行っているか、一定の単位に切り上げているか
  • 遅刻した時間を超えて差し引く定めや運用がないか
  • 遅刻が続く社員に、これまで注意や指導をしてきたか

実際の遅刻時間を確認

給与担当者が勤怠記録と給与の計算資料を照合する場面。
控除の計算を分単位で行っているか、一定の単位に切り上げているか

対応

  • 就業規則に、遅刻・早退の時間分を控除する定めと計算方法を置く
  • 控除は実際に遅れた時間分にとどめ、切上げの処理を見直す
  • 遅刻した時間を超えて差し引く定めがあれば、減給の制裁の上限の範囲内かを確認する
  • 遅刻の常習には、賃金控除ではなく注意・指導・懲戒で対応する
  • 注意や指導をした日と内容を、記録に残す

注意と指導を記録

上司が従業員に遅刻について説明し、注意や指導の記録を残す場面。
注意や指導をした日と内容を、記録に残す

ご相談で伺うこと

  • 就業規則・賃金規程のうち、遅刻・早退と控除に関する定め
  • 給与計算での控除の単位と計算方法
  • 対象となる社員の遅刻・早退の記録と、これまでの指導の内容
  • 懲戒の定めの有無と、その内容

出典