何が変わったか

障害者差別解消法は、行政機関と事業者に対し、①障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止と、②合理的配慮の提供を求めています。このうち②は、2024年3月まで事業者については努力義務でしたが、2024年4月1日から法律上の義務になりました(同法第8条第2項)。

対象は、商品やサービスを提供するすべての事業者です。会社の規模は問わず、個人事業主、NPO、ボランティア団体も含まれます。対象となる場面は顧客・利用者との関係が中心ですが、採用や雇用の場面は障害者雇用促進法が別に規律しています。

合理的配慮とは、障害のある人から社会的な障壁を取り除くための対応を求められたときに、過重な負担にならない範囲で、必要かつ合理的な対応をすることです。例えば、筆談や読み上げでの案内、段差のある入口での介助、パニックを起こしたときに落ち着ける場所の提供、視覚障害のある人への書類の読み上げなどが挙げられます。

義務違反に直接の罰則はありません。ただし、主務大臣は事業者に報告を求め、助言・指導・勧告をすることができ(第12条)、報告をしない・虚偽の報告をした場合には過料の定めがあります。差別的な取扱いや配慮の不提供が不法行為として損害賠償の対象になることもあります。

会社が備えること

合理的配慮の中身は、あらかじめ決まっているものではなく、本人との対話(建設的対話)を通じて個別に決めるものです。したがって、準備の中心は「何をするか」の一覧ではなく、「申出があったときに、誰が、どう話し合うか」の流れを決めることです。

具体的には、店舗や窓口で申出を受けた担当者が、その場で「できません」と答えるのではなく、本人の求めていることを聞き、自社でできる方法を一緒に探す、という対応を周知します。求められた方法そのものが難しくても、目的を達成できる別の方法があれば、それを提案します。

過重な負担かどうかは、事業への影響の程度、実現可能性、費用・負担の程度、事業規模、財務状況を総合して判断します。「前例がない」「他の客と扱いを変えられない」といった理由だけで断ることはできません。断る場合は、その理由を本人に説明します。

ウェブサイトや申込書など、日常的に使う媒体については、あらかじめ読みやすさや代替手段を整えておくこと(環境の整備)が、申出への対応を容易にします。環境の整備は努力義務ですが、これが不十分だと、個別の申出への対応が過重な負担になりやすくなります。

困っていることを聞き、伝わる方法を一緒に探す

口頭の案内が聞き取りにくい利用者が筆談を希望し、担当者とメモ用紙を使ってやり取りする場面。本人との対話により対応を決める例。

必要な対応を確かめる

例:口頭の案内が聞き取りにくい

使える方法を一緒に探す

例:筆談や図による案内へ

筆談は対応の一例です。必要な配慮は障害の状態や場面に応じて異なり、本人との対話を通じて決めます。求められた方法が難しい場合も、過重な負担にならない範囲で目的を達成できる別の方法を検討します。 公的資料で確認

注意点

不当な差別的取扱いの禁止(第8条第1項)は、改正前から事業者の義務です。障害を理由に入店や契約を断る、保護者や介助者の同伴を一律に求める、といった対応は、正当な理由がなければ差別的取扱いに当たります。

対応の記録を残しておくことは、後日のトラブルを防ぐうえで有効です。申出の内容、話し合った代替案、決めた対応、断った場合はその理由を、簡潔に記録します。

各府省庁は分野ごとの対応指針を定めており、自社の業種に該当する指針を確認しておくと、具体的な対応例が分かります。内閣府の事例データベースにも、業種別の具体例が掲載されています。

出典