措置義務の内容
2025年に公布された改正法(令和7年法律第63号)により、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)に第33条が加わりました。同条第1項は、職場において行われる顧客等の言動により労働者の就業環境が害されることのないよう、事業主は、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない、という趣旨を定めています。
措置の内容は、厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)に示されました。パワーハラスメントの措置義務(同法30条の2)やセクシュアルハラスメントの措置義務(男女雇用機会均等法11条)と同じ枠組みで、方針の明確化と周知・啓発、相談に応じる体制の整備、相談を受けた後の事実確認と適正な対処、プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止の周知、再発の防止が挙げられています。
対象となる事業主と労働者
企業規模による適用の猶予は設けられていません。対象となる労働者には、正社員のほか、パートタイム労働者と有期雇用労働者が含まれます。派遣労働者については、派遣先も措置を講ずる立場に立ちます。
厚生労働省が公表している企業向けのマニュアルでは、「顧客等」として、商品やサービスの利用者のほか、取引先、施設の利用者、来訪者が想定されています。取引先からの言動も、この枠の外には置かれていません。
就業規則に書くこと
顧客等のどの言動に対して組織として対応しないのかを決め、就業規則または社内規程に書きます。指針が措置の最初に挙げているのは、方針の明確化と労働者への周知・啓発です。対応した労働者を責めないことと、判断を上位者へ上げてよいことも、あわせて文書にします。
相談窓口と記録の様式
相談を受け付ける窓口を定めて社内に知らせます。担当者が使う記録様式には、日時、相手方、言動の内容、対応者、引き継いだ先を入れます。パワーハラスメントの相談窓口と一本化する形も想定されています。相談したことを理由に不利益な取扱いをしないという周知も、指針が挙げる項目に含まれます。
現場での線引き
一次対応をどこで打ち切るか、責任者へどの段階で引き継ぐか、警察や弁護士へどの段階で相談するかを、段階として決めておきます。通話の録音とその告知の方法、来店と入館の制限、取引の停止を判断する者も、同じ時期に決めます。就業規則の改定と社内手順の整備は、施行日の前に終える必要があります。