こんな場面
退職した従業員の代理人から、過去の残業代を支払うよう求める通知書が届いた。在職中の従業員から、タイムカードの写しを添えて未払の割増賃金を計算した書面を渡された。固定残業代を支払っているので未払はないと考えているが、相手の計算とは金額が大きく違う。こうした請求を受けたときの整理です。
まず確認すること
- 請求の対象になっている期間と、請求額の計算の根拠
- その期間のタイムカード・勤怠システム・パソコンの記録など、労働時間を示す資料
- 就業規則・賃金規程・雇用契約書の、割増賃金と固定残業代の定め
- 請求した人が管理監督者として扱われていたかどうか
法律の整理
労働基準法第37条第1項は、時間外労働・休日労働について、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上の率で計算した割増賃金の支払を求めています。1か月の時間外労働が60時間を超えた部分は、5割以上の率です。午後10時から午前5時までの深夜の労働にも、2割5分以上の率の割増賃金が必要です(同条第4項)。
労働基準法第114条は、裁判所が、第37条などに違反した使用者に対し、労働者の請求により、未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができると定めています。
賃金の請求権の消滅時効について、労働基準法第115条は、行使することができる時から5年間と定めています。そのうえで第143条により、当分の間、賃金(退職手当を除く)の請求権は3年間とされています。付加金の請求期間と、賃金台帳などの記録の保存期間(第109条)も、当分の間は3年です。厚生労働省のリーフレットは、この扱いが2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金請求権に適用されると説明しています。
会社が最初にすること
請求された期間の労働時間の記録を集め、会社側で割増賃金を計算し直します。記録の保存期間の内にある資料を廃棄していないかも確かめます。固定残業代を支払っている場合は、雇用契約書や賃金規程で、何時間分の割増賃金にあたるかが示されているかを確認します。通知書に回答の期限が書かれていても、計算の根拠を確かめる前に金額を認める回答を出すことは控えます。
ご相談で伺うこと
- 請求の書面と、請求した人の雇用形態・在職期間
- 労働時間の管理の方法と、残っている記録の範囲
- 賃金の内訳(基本給・手当・固定残業代)と、その根拠となる規程
- これまでに請求した人とやり取りした内容